https://tanakanews.com/230213russia.htm より
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★ウクライナでゆるやかに敗けていく米欧
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間もなく開戦から1年がすぎるウクライナ戦争で、軍事的に最も重要なことは、
昨年2月末の開戦日以来、ウクライナ全土の上空の制空権をロシアが握っている
ことだ。ロシア軍は開戦日の数時間でウクライナの空軍や防空施設の大半を破壊
して制空権を奪取した。ロシア政府はその日のうちにウクライナ上空を飛行禁止
区域に設定してICAOに通告した。それ以来、外国の民間機はウクライナ上空を飛
んでいない。欧米の政府高官らがキエフなどウクライナを訪問する際は、すべて
列車を使っている。露軍はウクライナ国内の列車運行を認めており、列車が最も
安全な移動手段になっている。ゼレンスキーも昨年末の訪米時、列車でポーラン
ドに出国し、そこで飛行機に乗り換えた。
https://www.zerohedge.com/markets/rabobank-fog-war-descends-dont-expect-be-resolved-end-day-or-end-month
The Fog Of War Descends, Don't Expect This To Be Resolved Any Time Soon
https://tanakanews.com/220225ukraine.htm
バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた
露軍は緒戦の大規模な地上軍侵攻でウクライナの残余の防空施設を調べて破壊し
た。その後、米欧がウクライナに短距離のミサイル類を送り込んだが状況は変わ
らず、ウクライナはずっと制空権をロシアに奪われたままだ。露軍は、自国に併
合したウクライナ東部とクリミアという露系住民地域では軍用機を飛ばしている
が、ゼレンスキー政権が管轄しているそれ以外のウクライナ(西部地域)には露
軍機をできるだけ飛ばさないようにしている。米欧がウクライナにあげた地対空
ミサイルで迎撃される危険があるからだ。露軍は、西部地域で制空権を侵害する
動きがあった場合、ロシア国内から精密誘導ミサイルを飛ばして破壊する。
https://www.moonofalabama.org/2023/01/size-matters-on-a-us-ground-intervention-in-ukraine-.html
Size Matters - On A U.S. Ground Intervention In Ukraine
https://tanakanews.com/220316ukraine.htm
優勢になるロシア
NATO軍など米国側は、ウクライナ上空の制空権をロシアから奪回しようとする試
みをやっていない。それをやると、ロシアとNATOとの戦争になってしまうからだ。
開戦直後、ゼレンスキーは米国に制空権の奪還(米NATOとしてウクライナ上空に
飛行禁止区域を設定すること)を頼み込んだが、米政府も米議会も断っている。
誰もロシアと直接戦争したくない。ウクライナ当局は、自国内でヘリコプター
などを低空飛行して使っているが、露軍に攻撃されやすく高リスクだ。
https://www.commondreams.org/news/2022/03/04/nato-rejects-ukraine-no-fly-zone-could-spark-full-fledged-war-europe
NATO Rejects Ukraine No-Fly Zone That Could Spark 'Full-Fledged War in Europe'
そんなわけでウクライナの制空権はロシアが握っているが、日本など米国側のマ
スコミはずっと「ロシアはウクライナの制空権を握れていない」と報じている。
「露空軍はウクライナよりはるかに多くの戦力を持っているが、戦法が悪く士気
も低いのでウクイナの制空権を握れていないのだ」などという、軍事専門家のコ
メントが堂々と載っている。こんな(笑)な事態になっているのは、米当局がそ
のように言っているからだ。マスコミや専門家は近年、米当局から教わった話を
鵜呑みにすることを事実上義務付けられている。コロナ危機以降、大事な分野の
報道の多くが歪曲されている。ウクライナ開戦直後は、昔からの情勢を知ってい
る日本人の記者が書いた現実的な記事も見たが、間もなく米国発の歪曲情報が席
巻して現実報道は消失した。米国側のマスコミは華々しい大誤報を続けてきた。
https://www.realclearwire.com/articles/2023/02/03/america_sleepwalks_into_war_with_russia_879774.html
America Sleepwalks Into War With Russia
https://www.moonofalabama.org/2023/02/nyt-on-ukraine-real-reporting-propaganda-for-balance-ominous-warning.html
NYT On Ukraine - Real Reporting, Propaganda For Balance, Ominous Warning
ウクライナが自国の制空権を西半分だけでも握っているのなら、EUの高官やゼレ
ンスキー自身が列車で移動する必要などない。最近は米欧の高官がキエフを訪問
する際にどんな交通手段を使ったのか報じられなくなっている。ロシアに制空権
を握られていることを隠したいので、時間のかかる列車で移動していることを報
じたくないのだろう。だが、先日キエフを訪問したEU高官(ミシェル欧州理事会
議長)が列車の個室から動画を配信したので、今も列車移動を強いられているこ
とが垣間見えた。
https://www.euractiv.com/section/global-europe/news/charles-michel-says-on-his-way-to-kyiv/
Charles Michel says on his way to Kyiv
ロシア政府は、米国側の歪曲報道を放置している。露側は、ウクライナの制空権
を握っているのはロシアだと繰り返し表明したりしない。RTなど露側のマスコミ
も黙っている。露政府は、ウクライナ戦争での自国の優勢を隠し、この戦争が地
上軍だけでゆっくり進み、一進一退っぽく延々と続くように仕向けている。米欧
が強い兵器を出してきたら、露軍が上空から空爆して間引き的に破壊し、露軍の
隠然優勢下で一進一退を演出し続ける。この戦争が長引くほど、米国側とくに欧
州がロシアからの石油ガスなど資源類の輸入を断って経済的に自滅していき、い
ずれ米欧の結束が崩れてNATOや米覇権体制が瓦解して多極化が進み、ロシアにと
ってうれしい世界体制に転換していくからだ。この戦争の決着は、ウクライナの
戦場で軍事的に決まるのでなく、世界的な政治経済の大状況として地政学的に決
まる。私はこれを「プーチンの偽悪戦略」と呼んでいるが、多くの人が「そんな
わけない。ロシアは本当に負けているだけだ。だってロシアだぜ」といまだに思
っている。
https://summit.news/2023/02/08/elon-musk-most-are-oblivious-to-the-danger-of-world-war-3/
Elon Musk: "Most Are Oblivious" To The Danger Of World War 3
https://tanakanews.com/220624russia.htm
プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類
米国側は、制空権をロシアから奪還しない限り露軍の隠然優勢が続き、ウクライ
ナ戦争で勝てない。制空権奪還のためにはロシアと米NATOとの直接交戦が必要だ
が、その場合核戦争や世界大戦を覚悟せねばならない。好戦的な勢力は「核戦争
を覚悟しつつ米NATOがロシアと直接交戦し、ウクライナの制空権を奪還してロシ
アを打ち負かすべきだ」と主張するのが筋だ。だが、そのような主張はどこから
も出てきていない。核戦争しようぜと提案するわけにいかない。ロシアを勝たせ
るわけにいかないと言っている人は多いが、勝つ方法が示されていない。米NATO
は開戦直後に、ウクライナの制空権を奪還しないと宣言している。NATO側がウク
ライナに戦闘機を送る話は繰り返し出ているが、いつも話だけであり、決して具
現化しない。ウクライナは勝利への道を閉ざされている。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/macron-says-russia-cannot-win-against-ukraine-while-hosting-zelensky
Macron Says Russia Cannot Win Against Ukraine
https://tanakanews.com/220619ukrain.htm
すでに負けているウクライナを永久に軍事支援したがる米国
軍事的に、ウクライナ戦争はこの状態で膠着している。ロシアは膠着を望んでい
るから、米国側が戦争を放棄しない限りこの状態がずっと続く。戦争が長引くほ
ど、米国側が資源面から経済的に自滅していく。政治的にも、欧州で厭戦機運が
強まって独仏などの政権が、従来の対米従属エリート支配から対米自立・非米的
な右派ポピュリスト支配に替わっていく。イタリアはその流れの先進国だ。いず
れ欧州はロシア敵視をやめて戦線離脱し、NATOが解体していく。
https://original.antiwar.com/Ted_Snider/2023/02/07/so-much-for-sanctions-on-russia/
So Much for Sanctions on Russia
https://bit.ly/3jOn5sD
Popularity Of Italy's PM Giorgia Meloni Is Rebuke To EU Bureaucrats And European MSM
米国も、ウクライナ支援に消極的な共和党が今年から議会下院の多数派になった。
来年の米大統領選挙でトランプが勝つと、米国はウクライナを支援しなくなる可
能性が高い(共和党の予備選は、最近の世論調査でトランプよりデサンティスが
優勢だが、3番手に出てきたヘイリーがトランプの副大統領になることでトラン
プ陣営が勝てる。ヘイリーはデサンティス潰しのために立候補した)。軍事面で
なく、政治経済の面で、米国側が敗北、というか戦争放棄していく。
https://news.antiwar.com/2023/02/09/rep-matt-gaetz-leads-resolution-calling-to-end-support-for-ukraine-pushes-for-peace/
Rep. Matt Gaetz Leads Resolution Calling to End Support for Ukraine, Pushes for Peace
https://tanakanews.com/230131ukrain.htm
ウクライナ戦争をやめたくてもやめられない米国側
こういう流れを作ったのは、米国の上層部である諜報界だ。諜報界は大統領に報
告する情報を歪曲して政策を不正操作してきた。米諜報界は、2014年にウクライ
ナの反政府運動を扇動して親露政権を潰して米傀儡・反露な極右政権に交代させ、
ウクライナ極右が国内東部のロシア系住民を殺し続け、ロシアがウクライナの東
部やクリミアを併合せざるを得ないように仕向け、ウクライナ戦争を誘発した。
開戦後、米国が欧州G7を率いてロシアに対する徹底的な経済制裁をする体制を発
案・推進したのも米諜報界だ。ロシアは経済制裁されて国家崩壊していくとか、
露軍は士気が低くて負けているなどとマスコミが歪曲報道したのも諜報界の差し
金だ。
https://tass.com/politics/1574253
Hostilities in Ukraine have been going on since 2014, Russia seeks to end them
https://tanakanews.com/220503ukrain.htm
ウソだらけのウクライナ戦争
本当にロシアが経済制裁されて国家崩壊し、戦場で露軍が敗北していけば、米諜
報界の策略は「成功」だったのだが、そうはならなかった。これまで何度か記事
にしたように、ロシアは経済制裁の体制を逆利用して中国インドBRICSサウジな
ど非米諸国を自国の側に引っ張り込み、世界の資源類と経済成長の中心地を非米
側に移動させ、米欧の自滅も誘発して、米覇権を崩して覇権体制の多極化を加速
することに成功している。プーチンのロシアにこの動きをさせたのは米諜報界だ。
米諜報界の主流派は、911事件から四半世紀かけて、多極化を誘発する隠れ多極
主義者に乗っ取られている。
https://www.theautomaticearth.com/2023/02/the-new-york-times-just-admitted-that-the-wests-anti-russian-sanctions-are-a-failure/
The New York Times Just Admitted That The West's Anti-Russian Sanctions Are A Failure
https://www.zerohedge.com/geopolitical/pentagon-lawmakers-ukraine-retaking-crimea-unlikely
Pentagon In Classified Briefing:Ukraine Retaking Crimea 'Unlikely'
米諜報界の主流派はもともと、米国の覇権体制を強化・恒久化したい米覇権主義
の勢力だった。彼らは、主流派を隠れ多極主義に乗っ取られた後も諜報界の勢力
として残り、大統領や米議会を動かしてウクライナ戦争による米国覇権の崩壊を
食い止めようとしている。最近は、米国からバーンズCIA長官がキエフを訪問し
てゼレンスキーに会い、ウクライナ戦争の今後について話し合っている。この会
談で、ロシアが併合を宣言したウクライナ東部2州とクリミアをロシア領として
ウクライナが認めることでロシアとウクライナが和解して停戦するという案がバ
ーンズからゼレンスキーに示されたという報道が出ている。また、米議会下院の
多数派を握った共和党が、ウクライナへの軍事支援を減らすためにウクライナ政
府高官の汚職を問題にしつつあることにどう対処するかという話も出たらしい。
ゼレンスキーは最近、側近たちを汚職容疑で次々と更迭しており、対応策がすで
に始まっている観がある。
https://news.antiwar.com/2023/02/03/report-biden-pushed-peace-plan-that-recognized-russias-control-over-20-of-ukraine/
Report: Biden Pushed Peace Plan that Recognized Russia's Control Over 20% of Ukraine
https://www.washingtonpost.com/national-security/2023/01/19/cia-william-burns-zelensky-ukraine-russia/
CIA director holds secret meeting with Zelensky on Russia's next steps
ロシアによる東部2州とクリミアの併合を米欧ウクライナが認めるという和解案
は、本当に提案されたらロシアの同意を得られる(プーチンは、世界の多極化推
進よりも自国周辺の平和を優先せざるを得ない)。だが、米国側がこの和平案で
まとまる可能性はほぼゼロだ。「極悪なロシアによる併合の悪事を認めることな
ど決してできない」という、歪曲されて凝り固まった善悪観が各方面からすぐに
出され、全面否定されるからだ。米政府内では「米国はこれから中国と対決せね
ばならないので、もうロシアのことは最重要でない」という「ロシア敵視放棄論」
も出ているが、どんな理屈をつけようが、ここまで人々を軽信させて凝り固まっ
た米国側のロシア敵視の体制を崩すのはとても難しい。
https://responsiblestatecraft.org/2023/01/30/is-the-ukraine-war-moving-toward-a-korean-solution/
Is the Ukraine War moving toward a ‘Korea solution'?
https://thecradle.co/article-view/20878/a-panicked-empire-tries-to-make-russia-an-offer-it-cant-refuse
A Panicked Empire Tries To Make Russia "An Offer It Can't Refuse"
最近は、権威あるジャーナリストのセイモア・ハーシュが「ロシアからドイツに
天然ガスを運んでいたノルドストリーム2のパイプラインを昨秋に爆破したテロ
リズムの犯人は米政府だった。バイデン自らが爆破を許可していた」という暴露
記事を発表した。米政府は「作り話だ」と否定したが、米国犯人説は当初から言
われており、やっぱりそうかという感じだ。
https://seymourhersh.substack.com/p/how-america-took-out-the-nord-stream
Seymour Hersh : How America Took Out The Nord Stream Pipeline
以前の米国は、ドイツがロシアと仲良くして天然ガスで全面依存することを了承
していたのに、近年の米国はどんどんロシア敵視を強めてウクライナ戦争を誘発
し、ドイツにロシアとの完全な縁切りを迫り、挙げ句の果てに見せしめ的にパイ
プラインを爆破した。米国は、同盟国であるドイツのことなど何も考えてくれな
い。ドイツでそのような世論が強まっている。しかし、ドイツのマスコミやエリ
ート層は対米従属なので、米国への批判をすべてもみ消してしまう。人々はマス
コミやエリート層を信用しなくなり、AfDなど右派ポピュリスト政党への支持が
増える。ノルドストリーム2の爆破も、ドイツを非米側に押しやる隠れ多極主義
的な策略のにおいがする。
https://www.moonofalabama.org/2023/02/hersh-how-america-took-out-the-nord-stream-pipeline.html
Hersh: "How America Took Out The Nord Stream Pipeline"
https://thesaker.is/trials-and-tribulations-of-the-collective-west/
Escobar: The Trials And Tribulations Of The Collective West
ウクライナロシアCIA