●JPモルガンの預金が2000億ドル流出
2023年7月24日(月) 16時17分 カテゴリ: アメリカ
こんにちは 山邊です。 さて、今年の3月にアメリカの銀行3つが 破綻しましたが、これがキッカケになって、 すわリーマンショックの再来か! と思われました。 ところがそれ以降、危機が連鎖することもなく 4ヵ月が経過しました。 株式マーケットの動揺も続かず、 その後堅調な様子。 日本は最高値更新! アメリカでも企業業績好調! なんて状況ですから もう当分は大丈夫じゃね? 危機は去ったんじゃね? なんていう空気になっています。 イエレンやパウエルなんかも 金融システムは盤石だ 労働市場も盤石だ、 なんて言うもんですから そうかそういうもんか と受け止められたようで 見た目危機は去ったように見えます。 まぁ景気の気は気分の気ですから それ自体は悪いことではありませんし 政府高官が何を言うかで マーケットは左右されますので それ自体はそういうものですが 重要なのは、「本当に危機は去ったのか?」 というところでしょう。 口先介入だけで危機が去る、なくなるなら そんなに素晴らしいことはないわけですからね。 前回、アメリカの所得税が減ってますねー というお話しをしたわけですが 今日は少し銀行の話をしましょう。 先週、アメリカの決算発表が続きましたが 4大銀行の一つ、JPモルガンの決算では 利益が大幅に増えたことが話題になりました。 逆にゴールドマンは利益を大幅に減少させて 明暗が分かれたなんて報道もありましたが 預金が減少していることに触れている 報道が少しだけあったようです。 そもそも的には コロナの時にばらまいたお金が底をついてきて 国民が生活のために預金を取り崩していますので 預金そのものが「減る」トレンドだったわけですが 3月にいきなり3つ、金融機関が破綻したことで 1)中小金融機関や地銀から預金を引き出して 大手銀行に預け替える動きが加速したのと 2)預金をMMFなどに付け替える動きが活発になった という2つの動きで、銀行セクター全体の預金流出が 顕著になったわけです。 ところが今回の決算では 預金の流出先である大手銀行、JPモルガンでさえも 預金残高が減っていることが明確になったわけです。 減少額は2000億ドルですから、日本円で28兆円くらい。 ちょっと結構な額面ですね。 とは言っても総額2.5兆ドルが、2.3兆ドルになった ということなので、10%も減ってないわけです。 ただ流入先と言われるJPモルガンですら 2000億ドルの流出というのは 銀行セクター全体で考えると かなりシャレにならない状況であることが わかると思います。 もちろんですが、税金の話と同様、 時間の経過とともに状況が悪化しているわけでして。 この調子で減少が続くとあんまよろしくないですねぇ ということなんです。 日本ではあんまし話題になってませんが アメリカでは8月末に、学生ローンの 支払い猶予が終了します。 コロナで大変だから、支払いペンディングしましょう という猶予期間が終わるということです。 日本のコロナ対策ゼロゼロ融資の返済猶予が 終了したのに似てますね。 で、この猶予されていた学生ローンですが 支払い再開で影響を受けるヒトは およそ4000万人だそうです。 平均支払額は400ドルですから月5万円程度ですが 月5万返済に取られるのは、普通のヒトには 結構イタイとわけですね。。 足りない分は 1)預金を取り崩す 2)消費者ローンを使う というのが大きな2択になりますが 銀行の融資基準が上がってきていますので あんまし状況は芳しくないわけです。 さらにこの消費者ローンでは 今の時点で銀行セクターが持つ消費者ローンの1/4、 まぁ25%程度が不良債権になっていると言います。 支払いに問題がある ということです。 現時点でそうなのですから、これからこの数値は 悪化することになるでしょう。 で、これだけならまだしも さらに大きな時限爆弾がありまして それは何かと言えば 「商業用不動産」なんですね。 2007年、2008年の金融危機は サブプライムローンという 個人向け不動産ローンが焦げ付いて 起こったわけですが 規模で言えば個人向け不動産ローンより 商業用不動産ローンの方が規模が大きいのです。 2007年、2008年の時の危機では もちろんCDSなどのオプション取引といった レバレッジがかかって損失が積み上がる仕組みの 問題もありました。 ただローン残額で言えば1.3兆ドル程度です。 それに対して現在の商業用不動産ローンの総額は 大手行だけで1兆ドル、中小地銀で2兆ドル それが商業用不動産ローン総額の38%ですから その他生保などの金融機関を合わせると ざっくり8兆ドル規模です。 リーマンの時の約6倍ですね。 で、アメリカの商業用不動産ですが 空室率が50%近くになっていて、 ちょっとシャレにならない状況になっています。 コロナの時のテレワーク、リモートワークで オフィスの広さがそれほどなくてもビジネスが回る ということが明確になったので オフィス解約が続いて、 空室率が上がっているわけです。 企業の論理から言えば、オフィス賃貸料という 莫大な固定費が削れるなら オフィス面積削っとこう、 となりますよね。 加えてFRBの高金利政策の影響で 商業用不動産のオーナーが支払う毎月の金利が 平均30万ドルから88万ドルへ上昇しています。 固定金利なら金利支払いも変わらないわけですが インフレ前はまれに見る低金利でしたし。 ということで 不動産オーナーは支払いは増えたが収入は激減して、 もう踏んだり蹴ったりです。 で、ですね、 この商業用不動産ローン8兆ドルの返済が 年末に迫っているわけですが 高金利によって貸し出し基準が高くなっているので 借り換えできないオーナーが多発するのでは? と言われています。 借り換えできなければ、一括返済が必要になりますが そんなのができるならそもそも借りてないわけで この時点で破産するヒトが続出することになるだろう という懸念があるわけです。 不動産オーナーは破産すればノンリコース契約で お役御免になるわけですが、銀行はそうはいきません。 その不良債権化した不動産を処分するなり 証券化するなりして、債権回収を図るわけですが 貸した額以上にならないなら 足りない分は「損金」になるわけです。 戻りますが リーマンの時のローン元本が1.3兆ドル 今の商業用不動産ローンの元本が8兆ドル ということは、このままいけば 「リーマン以上、どころではない」 ことが容易に起こりうる、というわけです。 シャレになりませんよね。 わかっていただけますでょうか。 つまりは 米ドルも 米国債も 米国経済も 全部ぶっ飛ぶかもしれないというのは 決して誇張ではないんですよ。 そして米ドルは基軸通貨ですから もし破綻したとしたら 日本経済もただでは済まない と容易に想像できると思います。 私が「ちょっとヤバいです」と言う理由も 納得していただけますでしょうか。 もちろんそんなことが起こらないなら それに越したことはありません。 ナショナリストとグローバリストの争いで ナショナリストが優勢であるなら そんな事態を避けてくれるんじゃないだろうか という期待もなくなないです。 しかしそんなことはどこにも保証されていません。 トランプもそんなことは言ってませんし 全部私たちの期待が高じている「だけ」という 見方もできます。 厳然たる事実として もしそれを期待して、そうならなかったとしても 自分以外に誰も責任は取れないわけですし。 これはワクチンの時と同じで、 打つ打たないは自分で選んで自分で決める つまりは「自己責任」ということに他ならないわけで そう考えたら、 最悪の状況を想定して 最善の準備をする のは必要なことだろうと 改めて着地したわけです。 どのみち今の「ペーパーマネー」が ただの紙になるのは避けられないだろうから それに固執する意味はほとんどないわけです。 そう考えると 今できることをする という行動指針から出てくる答えは 「顧客リストをつくる」 ことに他ならないのです。 これで状況は大分クリアに見えて来たのでは なかろうかと思います。 コロナ騒動以降 昨日と同じ今日が 明日も続くことを期待できない ことを身に染みて経験してきたわけですから 皆さんと一緒にたくましく生き残っていければと 思っております。 今日も明日も あなたとあなたの大切な人たちの上に 笑顔と安らぎと、安心があるように 願っております。 では 山邊 アメリカ金融
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