https://twitter.com/KanAugust/status/1565901547346731010
去年の夏、8月にサウジアラビアとロシアは軍事協力協定に調印したと発表がありました。
https://www.rferl.org/a/saudi-russia-arms-weapons-/31425164.html
覚えている人いますか?
当時は特に大きく話題になりませんでした。
しかし、これはドル崩壊の引き金となるほどの事件でした。
長いですが重要なので、解説します。
まず、前提から。
アメリカが世界最強なのは「基軸通貨ドル」を持っているから
全ての国は貿易のためにドルを必要とするので
ドルへの尽きない需要があるため、
アメリカはお金が必要になればどんどん刷ればよい。
アメリカは60年代、70年代にベトナム戦争をやったが
泥沼になり、戦費がかさみ、ドルを大量に発行しまくった。
大量のドルを保有していたフランスやイギリスは
不審を抱き、手持ちのドルとアメリカが所有する金との交換を要求し始めた。
当時は金本位制だったので、金1オンス35ドルで変換が約束されていた。
そこで、金がどんどんアメリカから出ていって半分くらいになり、
さすがにこれはやばい、ということで
1971年8月、ニクソンはドルと金の交換の停止を宣言。
いわゆる「ニクソンショック」
金に裏付けられていたドルは、この日を境に何の裏付けもない通貨となった。
これで、アメリカは好き放題ドルを刷ることができる。
しかし、刷られまくるドルの供給を誰かが買い支えなければさすがにやばい。
そこで、3年後の1974年、当時国務長官のキッシンジャーがOPECの長であるサウジに飛び、この後40年間封印されていた秘密の協定を結ぶ。
https://www.bloomberg.com/news/features/2016-05-30/the-untold-story-behind-saudi-arabia-s-41-year-u-s-debt-secret
協定とは、アメリカがサウジの王室を守るから、石油の取引は全てドルにし、収益はドル(アメリカ国債)で保有する。
これで、世界中の全ての国は石油(そして他の資源)を買うためにドルを保有しなくてはいけなくなった。
いわゆる「ペトロダラー」の誕生。
そして、ドルは金ではなく、石油で裏付けされることになった。
これがどれだけアメリカにとって死活的に重要だったかと言うと、
これを破った国は容赦なく滅ぼされてきた。
例えば、
ユーロで石油取引しようとしたイラクは2003年に侵略され、フセインは殺された。
https://www.rferl.org/a/1095057.html
2009年に金本位制に移行しようと呼びかけたリビアは2011年に暴動起こされ、NATOに空爆され、カダフィは殺された。
https://thenewamerican.com/gadhafi-s-gold-money-plan-would-have-devastated-dollar/
良いとか悪いとかはひとまず置いておいて、これが世界の現実で、いわゆる「ワールド・オーダー」ってやつだった。
しかし去年の夏、事態は急展開を迎える。
2021年8月、サウジアラビアとロシアは軍事協力協定に調印したと発表。
https://www.rferl.org/a/saudi-russia-arms-weapons-/31425164.html
ちなみに、ちょうど同じ月にアメリカはアフガンから逃げるように撤退しました。
https://twitter.com/palkisu/status/1427142485441093633
ところで、覚えてますか?
「ペトロダラー」は「アメリカがサウジ王室を守るから(軍事協定)、石油取引はドルにしろ」という密約の上に成り立っていました。
そのサウジはロシアと軍事協定を結ぶことによって、アメリカから守ってもらわなくてもよくなったのです!
これはアメリカの軍産複合体にとっても重要です。
世界で一番の軍事武器の輸入国とはどこでしょうか?
サウジアラビアです。
それでは、世界で1番の軍事輸出国はアメリカですが、2番めは?
ロシアです。
そして今年3月、サウジは石油取引を元で行うことを計画していることが明るみに出ました。
サウジの王室はロシア(と中国)に守られ、石油取引は中国元で行う。どこかで聞いた話ですね。
https://jp.wsj.com/articles/saudi-arabia-considers-accepting-yuan-instead-of-dollars-for-chinese-oil-sales-11647363739
ちなみに去年の夏同じ時期に、ナイジェリアもロシアとの軍事協定に調印。
https://www.reuters.com/world/nigeria-signs-military-cooperation-agreement-with-russia-2021-08-25/
ナイジェリアは、OPECで中東以外での原油生産量トップの国。
このサウジアラビアをめぐる歴史的転換のやばさに気づいたアメリカは
今年7月15日、バイデンをサウジに飛ばします。
表向きは原油の増産を懇願しにいったことになっていますが、それは表向きでしょう。
https://www.nbcnews.com/think/opinion/joe-biden-visits-saudi-arabia-bow-reality-rcna38419
それでは、何を懇願しに行ったのでしょうか?
7月22日、プーチンはBRICS諸国は新しい国際基軸通貨を確立するために協業していると発表しました。
https://markets.businessinsider.com/news/currencies/dollar-dominance-russia-china-rouble-yuan-brics-reserve-currency-imf-2022-6
そして、サウジはエジプトとトルコとともに、BRICSに参加することを検討中とのニュースが出てきます。
https://www.yahoo.com/video/emerging-markets-rush-join-brics-190000224.html
つまり、バイデンはサウジ王室に、BRICSに参加しないでくれ、と懇願しに行ったと考えるのが普通でしょう。
なぜなら、そんなことされたら「ペトロダラー」が完全に終わってしまうからです。
しかし、ジャケットを自分で着ることもできず
話していることは誰にも理解不能で
自分の周りの人たちにさえガン無視されるような人の言うことを
サウジ王室が聞くわけ無いですよね。
ところで、もう1つ重要な点。
BRICSは中国、ロシアに並んでさらに重要な国があります。それは人口2位、経済(GDP)で5位のインドです。
インドとロシアの間にある南北輸送回廊というのを聞いたことありますか?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%8C%97%E8%BC%B8%E9%80%81%E5%9B%9E%E5%BB%8A
イランを経由してインドとロシアを結ぶ全長7200kmの輸送網(船、鉄道、道路)のことです。
これができると、インドとロシアは中東、ヨーロッパ、その間のスエズ運河を通ることなく取引ができることになる。つまり、ロシア・インド間の取引は欧米には全くつかめなくなります。
南北輸送回廊:赤の線
従来の輸送ルート:青の線
今年の7月5日インドはイランに回廊を開くことを要請。
https://qz.com/india/2186296/a-new-corridor-for-india-russia-trade-via-iran-is-almost-ready/
同7月、この回廊を使ってロシアはインドに物資を送り始めた。
https://economictimes.indiatimes.com/news/economy/foreign-trade/russia-launches-trade-with-india-via-eastern-branch-of-instc-involving-asian-states/articleshow/92715733.cms
そして、
7月13日、インドの中央銀行はロシアとの貿易にインド・ルピーを使うシステムを発表した。
https://www.reuters.com/markets/us/indias-move-rupee-settlements-may-help-trade-with-russia-2022-07-13/
つながりましたね。
まとめます。
アメリカの強さは基軸通貨ドル。
70年代まではドルは金で裏付け、それ以降は石油 -> ペトロダラー。
その引き換えにアメリカがOPECの盟主のサウジ王室を守る。
現在
ロシアがサウジを守る。
サウジはBRICS基軸通貨システムに参加検討中。
中国は元でサウジから石油を買う。
インドはルピーを使って国際取引する準備ができている。
ドルから追い出されたロシアは、ルーブルでの決済をヨーロッパに要求。
それではこれらの国の通貨の裏付けは?
そこで、BRICS基軸通貨システムが重要になります。近々詳細が明らかになると思いますが、金、そして資源などを裏付けしたものになるでしょう。
BRICSシステムへの参加を検討している国は増えるばかりです。
このシステムがドル以外で国際取引をし始めたら。
需要が大きく減る裏付けのないドルはどうなるのでしょうか?
誰がアメリカのドルを買い支えるのでしょうか?
最近のアメリカ国債保有上位30カ国
日本がダントツ1位です。
これから世界(欧米日側)はコロナ以上の荒波に飲み込まれていくのではないでしょうか?
少なくとも、後戻りできないほどに世界は変わりつつあるのです。
以上。
ロシアDS